演舞場発 東寄席 第二十五回

演舞場発 東寄席 第二十五回 2017年4月28日(金)

第25回『落語と日本酒と江戸野菜を楽しむ会 in新橋演舞場』にお越しいただきまして、誠にありがとうございます。ここ新橋演舞場地下『東寄席』には2回目のご出演となります、春風亭一朝師匠をお迎えいたしました。
『第25回 落語と日本酒と江戸野菜を楽しむ会 in 新橋演舞場』春風亭一朝

一朝師匠お馴染みの『イッチョウ懸命・・』で始まる噺は五代目柳朝師匠譲りの江戸前の芸。高座をお楽しみいただきながら、今宵も新橋料亭街伝統の味を受け継ぐ演舞場の調理場でご用意致しました酒の肴と、石川県の銘酒と旬の江戸東京野菜で春風の宴をお楽しみいただきました。
 

落語を楽しむ

開口一番『金明竹』春風亭一花

今宵の開口一番は一朝師匠と二度目の登壇、一朝師匠の八番目のお弟子さんの春風亭一花さんです。その可憐な高音は会場に咲く一輪の花のよう。挨拶ひとつで観客席からは温かいため息が漏れます。細身で小柄な一花さんですが何も物怖じすることなく師匠から学んだ粋で陽気な江戸の節を会場に響かせます。今宵はさすがに一朝師匠のファンが多く集まっているなか、“一 花さんも楽しみでね”と、こちらも密かに期待を寄せるファンもいるよう。滑舌良く流暢な上方の口上が見せ場の『金明竹』で会場を驚きと笑いに包みました。

 

一席目 『片棒』春風亭一朝師匠

春風亭一朝さん

菖蒲浴衣が鳴り響き草色のお着物を纏った一朝師匠のご登壇に、会場からは「よっ」と掛け声が響きます。「落語と日本酒と江戸野菜。贅沢なもんですね。私がそっちへ行きたい。」と早速冗談で沸かせ「わたくし春風亭一朝ともうします。名前が一朝でございますんで、今日はイッチョウ懸命に」とお決まりの名文句。会場は待ってましたと拍手喝采が起こります。

枕では一朝師匠の大師匠でいらした林家彦六師匠のお話。彦六師匠といえば“彦六伝”などと語られるほど日常から冗談がお好きで周囲を驚かせているお噺までありますが、孫弟子でらっしゃる師匠も「86歳まで現役で、晩年は幽霊みたい」と言ってからかい「てめ〜〜〜〜たちは、そんな〜ことも〜〜わからね〜〜のか〜〜」と彦六師匠を演じて観客を笑わせます。

春風亭一朝さん

こんなお話しもありました。彦六師匠が右膝を痛めた際、 病院に付き添うと医者からは「お歳からくる痛みです」との診察。すかさず彦六師匠、「先生〜〜、左足も同い歳〜」と医者をからかったそう。春風亭 小朝師匠があげたアーモンドチョコを食べて、「種が〜出た〜。」と口からアーモンドを出した話しなど、次々飛び出す師匠ならではの体験話しに会場は大いに盛り上がります。笑福亭松鶴師匠の九官鳥の話など、これはもう枕としておくには勿体無いほど。大笑いの一席を興じ演目の『片棒』へ。

町でも知れたケチな男、赤螺屋(あかにしや)。跡取り決めに自分の一大事である“弔い”をどんな形にするのか三人の息子に相談すれば、なぜだか一変!長男、次男は湯水のごとくお金を浪費、テンテスケステテンテン、わっしょいわっしょいとお祭り騒ぎ・・・!ケチを継承した三男も親父 は死んでも死にきれず棺桶から出てきて片棒担ぐ!歌舞伎で囃子をしていた師匠ならではの陽気で江戸っ子気質な語り口調と腕前に会場中がしびれた様子の一席でした。
 

二席目 『妾馬』春風亭一朝師匠

春風亭一朝さん

縞の小町鼠の装いを身に纏い仕切り直した二席目も会場が盛大な拍手で迎えます。「まってました!たっぷりなんていうのはうれしいですね。ありがたいな、うれしいなと客席を見ると親類がいたりなんたりしてね。」二席目も、笑いの中で始まります。

真打ちになって34,5年という一朝師匠。かつての稽古場でのことを懐かしそうに話します。「試験が嫌で噺家になったのに、真打ちになるときは試験がありましてね」会場は笑いに包まれながらも、聞けばその試験、当時会長の柳家小さん師匠でご自宅の道場に高座をこしらえて、圓歌、金馬、柳朝、古志ん朝、談志、圓楽、といった名人揃いの顔ぶれの前で一席やらされた、といったなんとも贅沢な顔ぶれに「おお」と感動の声を漏らさずにいられません。「でも、誰も笑わないですよ。当然ですね」とサゲられ大笑い。感動と笑い、 感心と笑い..寄せては返す波のように引き込まれてはザブーン、ザブーンと春の海に放り出されるもその居心地の良さが堪りません。ふと気づけば緞帳があがるかのように江戸の町中へさらわれます。
殿様のお屋敷に奉公にあがった妹のお鶴にめでたく男の子が生まれたことで、お世継ぎを生む鶴は「お鶴の方様」へ。鶴の兄、べらんめえ口調の八五郎の登場する“八五郎出世”は『妾馬(めかうま)』のはじまりです。口が悪くて礼儀知らずな短気な男、それでいてお調子者な八五郎を見事に演じ、たちまち会場を笑いの渦に惹き込んだかと思えば、兄弟の久々の再会のシーンなど不器用そうな八五郎の家族愛に会場からは目頭を抑え、鼻を啜る音が響きます。めでたい席に都々逸を歌い出す八五郎。「粋」がわかる師匠の落語に会場は幸せの時間が流れました。二幕が終わってもその余韻にしばらく客席はひたり、お酒とともにじんわりとしたその余興を楽しみました。

味覚を楽しむ

江戸東京野菜「しんとり菜」

○江戸東京野菜「しんとり菜」

東京は青梅で有機農業を営むTYファーム。4月には天王洲アイルにカフェ&デリカテッセン「NOZ」がオープンする活躍ぶり。そんなTYファームのこだわりの江戸野菜、本日は2回目の登場のしんとり菜です。今、畑にあるもので最後といわれるアブラナ科の葉物野菜。この菜は柔らかいけれど茎がしっかりとしていて、白菜のような食味を楽しめます。今宵は出汁のきいた煮浸しをご用意いたしました。

演舞場の美味を楽しむ

○演舞場の美味を楽しむ

今宵も季節を味わう特別献立をご用意しました。たこやカレイといった旬の味わいに、すこしずつ深緑が芽吹く木の芽の香りを添えて。美味しいお酒と落語に合わせ、新橋伝統の味わいをお楽しみいただきました。

お酒を楽しむ

『第25回 落語と日本酒と江戸野菜を楽しむ会 in 新橋演舞場』春風亭一朝

落語と共にお楽しみいただきました日本酒は石川の酒造、車多酒造さんの四種です。文政六年創業194年と歴史ある蔵で作り続けた『天狗舞』は今や稀少な山廃純米酒にこだわり続け、本来の日本酒の持つきめ細やかなふくらみのあるお酒をお楽しみいただきました。また、日本酒の美味しさをより多くの方に感じてもらいたいと新たなコンセプトで立ち上げた『五凛』も金沢や富山のミシュラン店にも並ぶ出来栄え。なめらかな喉越しとお食事に合わせて愉しめる旨味が、今宵の一興を飾りました。

(写真右から)

○天狗舞 山廃本醸造 生搾り
一つめのお酒は、一切の加熱処理をしていないという生搾り。山廃の本当の旨味を感じれる逸品です。爽やかな香りがクセになる旨さ。ねっとりとしたイカの雲丹和えとうまく合い、開場後お待合の会場を陽気にさせる逸品でした。

○天狗舞 山廃純米酒
一酒目とは趣向を変え、濃厚なとろみとキレの良さを加えた美味しさです。一席終わった仲入りに余興を愉しむに相応しく、お食事には魚介のカルパッチョと合わせてその味わいを楽しみました。

○五凛 純米酒
お客様、飲食店、酒販店、蔵元、杜氏の五者が常に凛とした関係で凛として酒の旨さを楽しんで頂けるように名付けたというこのお酒。なめらかで「凛」とした旨さです。飽きのこないその旨味はどの食事も惹き立てるバランスの良さ。かれいの柚庵焼きとあわせてお楽しみいただきました。

お酒を楽しむ

○五凛 純米大吟醸
『日本酒はおいしい』という事を多くの方に感じてもらいたい。車多社長自ら、お猪口に注ぎその味わいを届けました。純米大吟醸が生むフルーティで優しい甘さに思わず多くのお客様から驚きと笑顔こぼれる最後の一酒として取りを飾りました。

お楽しみ抽選会

お楽しみ抽選会

今宵の締めくくりは、こちらも恒例となりました抽選会です。本日も様々な景品を前に拍手と感嘆の声の響く抽選会となりました。

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