演舞場発 東寄席 第四十回

演舞場発 東寄席 第四十回 2018年6月29日(金)

 第四十回 『落語と日本酒と伝統野菜を楽しむ会』にお越しいただきまして、誠にありがとうございました。
『第四十回 落語と日本酒と伝統野菜を楽しむ会in新橋演舞場』柳家さん喬

 早すぎる梅雨明けを迎え、晴天と厳しい暑さ続く頃、「東寄席」が開催されました。
節目となる会には毎回、第一回目の高座をお勤めいただいた、柳家さん喬師匠にご出演をお願いしております。
第四十回目を迎える「東寄席」。今宵も、柳家さん喬師匠に高座を勤めていただきました。

 お食事は、新橋料亭街伝統の味を受け継ぐ演舞場の調理場でご用意させて頂きました。
本日のお料理と共にお楽しみいただくお酒は、東寄席では初となる、島根県からお越し頂きました、吉田酒造さんにご用意いただきました。

それでは振り返りをご紹介いたします。

演舞場の味覚を楽しむ

本日の演舞場のお料理

 今宵も新橋の名店、料亭金田中の流れを汲む新橋演舞場調理場、
斎藤正達調理長による特別献立をご用意いたしました。

 酒の肴膳として、先付けには本日のお野菜ズッキーニの入った、夏野菜の辛子味噌掛けをご用意。茄子、赤・黄パプリカが夏らしい鮮やかさ添えます。

八寸には、根菜甘酢和え、かに焼売、今が旬のとうもろこし香ばし揚げ。
爽やかなグリーンのだだちゃまめ豆腐は、ふくよかな豆の香り。
金平牛蒡、卯の花明太和えなど、ついついお酒が進んでしまうお品をお詰めいたしました。

煮物は高野豆腐、里芋、筍、人参、ブロッコリーをそれぞれ、自慢のお出汁で炊き上げました。

向付は鯛、鮪をご用意。

利き酒会には、黒むつの西京焼。ふわっと柔らかく焼き上げました。
添えられた花蓮根甘酢漬け、海老と麩の松葉和えの彩りと食感が楽しい一皿です。

御食事には、ほっとする味わいの焼きおにぎり茶漬けを。
水菓子の白玉入りフルーツポンチでさっぱりと締めくくっていただきました。

落語を楽しむ

開口一番『のめる』橘家かな文

 本日の開口一番をお勤めいただいたのは、
橘家文蔵師匠のお弟子さん、橘家かな文さん。
なんとも爽やかな好青年です。

演目は日本酒の会にちなんだ「のめる」。
何かにつけて「一杯飲める」が口癖の男と、
「つまらない」が口癖の男。

お金をかけてお互いに口癖を言わないゲームを始めます が、どうにか相手に言わせようと、知恵をしぼる... という、掛け合いが楽しい演目です。すっきりとよく通る声とテンポの良い語り口には、噺家としてキラリと光るものを感じさせます。
節目となる今宵の落語会。
見事、その幕開けを勤め上げていただきました。

一席目『千両みかん』柳家さん喬

柳家さん喬

 おなじみのお囃子が流れ始めました。
会場は期待に包まれ、いよいよ、本日の主役、柳家さん喬師匠の登場です。
拍手喝采で迎えられた師匠。
暑い中お越しいただいたお客様を労います。

話題は、お召し上がりものの「旬や季節感」へ。
現代では、ハウス栽培などの技術が上がり、野菜から感じる季節が希薄になっています。
師匠の子供時代には、木製の氷冷蔵庫で冷やしたトマトを学校帰りにおやつとして用意してもらっていたそうです。

「トマトの薄皮をむいた、あの、 なんとも言えないセクシーな...」と、 愛着を感じさせる表現で、笑いを誘います。 まくらといえど、氷冷蔵庫のひんやり感や トマトの青々とした香りやみずみずしさまでも感じさせる 情景描写はさすがです。

 師匠のペースに引き込まれるように、
するり、と本日の一席目「千両みかん」が始まります。

急に気の病を患い、ふさぎ込んでしまった呉服屋の若だんな。 心配した父親は、番頭の佐兵衛に「何が悩みか聞き出せ」と言いつけます。 なんと若旦那は、旅先で出会った「みかん」に恋い焦がれていたのです。 若い娘さんとの恋かと勘ぐっていた番頭は拍子抜け。 どうしてももう一度、あの美味しいみかんを食べたいという若旦那に、 番頭は思わず「座敷中ミカンで埋めてあげます」と大見得を切ってしまいますが、 季節は真夏。みかんなど江戸中の八百屋を探し回ってもあるはずがなく...

急に暑さの厳しくなった、この夜にふさわしい演目でした。

〜仲入り〜

二席目『船徳』柳家さん喬

 仲入りをはさみ、二席目のはじまりです。
なんでもかんでも「やばい」という言葉で
自分の気持ちを表現してしまう、
近頃の若者を取り上げ
「このラーメン、まじやべえ」と演じると、
会場は爆笑に包まれます。

もうすぐ催される浅草のほうずき市の話題から、
師匠が二席目に選んだのは「船徳」。
古典落語の演目の一つで、曽根崎心中の主人公、徳兵衛とお初の名前を借りて作られた
「お初徳兵衛浮名桟橋」という人情噺を三遊亭圓遊が改変したパロディと言われています。

柳家さん喬

 いい加減な性格直させるべく、大川端にある船宿に預けられている若旦那の徳兵衛。 芳町で馴染みの芸者(曽根崎心中・お初を匂わせていますね)に気に入られようと、 船頭にしてほしいと頼み込みます。しかし、一向にお客がつかない徳兵衛。 ある夏の暑い夜、浅草寺の四万六千日の縁日で、他の船が出払ってしまいます。 おかみさんの心配をよそに、徳兵衛はここぞとばかり、馴染みの客を乗せて船を漕ぎ出すが...

滑稽話でありながら、
ねっとりとまとわりつく夏の夜の空気や、
大川(現在の隅田川)を吹く風の心地良さが思い浮かぶような
細やかな芸を魅せてくれるのは、柳家さん喬師匠ならではの魅力ですね。

江戸伝統野菜を楽しむ

OmeFarmの島田さん

 毎度おなじみとなりました、OmeFarmの島田さんにご紹介いただいた今宵のお野菜は「ズッキーニ」。

「江戸伝統野菜」ではありませんが、
この時期、採れすぎて採れすぎて
どうしようもない、という、
季節感たっぷりのお野菜です。

日本食にはなかなか使われませんが、
ズッキーニは、うりやキュウリや南瓜、冬瓜の仲間。

夏野菜の辛子味噌和え



 本日は、料亭・金田中の技を引き継ぐ演舞場の調理場で、
夏野菜の辛子味噌和えに仕立てられ、
色鮮やかな先付として登場しました。

 今回も会場での販売会を行ってくれたOmeFarmさん。 お野菜セットにはもちろんズッキーニも入っています。 それから、加熱処理をしていない美味しいはちみつも好評です。 東寄席に遊びに来た際には、ぜひ一度お味見をしてみてください。

  • OmeFarmのお野菜セット
  • OmeFarmのはちみつ

お酒を楽しむ

 本日のお酒をご用意頂いたのは、初登場となります島根県の吉田酒造さん。
本日は「月山」というお酒をお持ちいただきました。

お酒を楽しむ

 はじめに、ご紹介くださった望月商店の望月さんが解説をしてくださいます。
なかなかデパートなどでは出会えないお酒ではありますが、
超軟水という難しいお水を使って美味しいお酒を作っている蔵元さんです。
近頃は、〇〇屋というお店も減ってきましたが、
本日の落語にもあった「旬」の物に出会える、
専門店にもぜひ足を運んでみてください、と望月さん。

  • 吉田酒造 代表取締役 吉田さん
  • 望月商店 望月さん

 続いて、吉田酒造の代表取締役、吉田さんにお話いただきます。
実は島根は日本酒発祥の地。
日本最古の歴史書「古事記」の出雲神話にも、お酒についての記述が残されています。

「日本一柔らかい水」と言えるであろう硬度0.3の超軟水を使用して酒造りをしています。 古い文献にも残るほどおいしい水とされていますが、酒造りをする際には、 軟質の水を使用することは通常は困難とされています。 それでも、吉田酒造が軟水を使うのは、 古来より日本の天然水は軟水が多い日本の風土ということ、 華やかな香りと米本来の旨みを感じていただきやすい酒にこだわっているから。

本日の日本酒

(写真右から)

月山 出雲 特別純米

「ワイングラスで美味しい日本酒アワード」最高金賞を獲得した、優しい香りと味わいの旨口純米酒です。 今宵も、その称号にふさわしくワイングラスで召し上がっていただきました。

月山 純米吟醸

広島国税局清酒鑑評会『味を主たる特徴とする清酒』部門優等賞を5年連続受賞した、月山の自信作です。 「このお酒は間違い無いかと思います。」と吉田さんも太鼓判の一本です。

月山 芳醇辛口無濾過原酒

吉田酒造で一番たくさん作っているお酒が、この「月山 芳醇辛口無濾過原酒」です。 辛口というと、どうしても淡麗によってしまいがちですが、芳醇でありながら辛口、という 超軟水を使った出雲流の純米造りを感じるお酒です。

月山 美月 純米吟醸

日本酒の「入門編」としておすすめの、アルコール度数を抑えた優しいお酒です。 華があり透き通るような味わい、 それでいて米の旨みを最大限に引き出しています。 普段日本酒を飲まれない方、女性にも人気があります。

お楽しみ抽選会

  最後は東寄席恒例の「お楽しみ抽選会」です。

お楽しみ抽選会

 Ome Farmさんからはお野菜お届けセット、そして本日お酒を提供して頂いた吉田酒造さんからは、 おちょこや前かけなどのグッズをプレゼントして頂きました。 演舞場からは新橋の若手芸者衆が出演する「なでしこの踊り・夏2018」のチケットを。 柳家さん喬師匠からは、可愛いイラスト付きのグッズや、サイン色紙が送られました。

 
 今回も満員御礼となりました、大盛況のうちに幕を閉じた『東寄席』。
次回は2018年7月27日(金)、「三遊亭兼好 独演会」です!どうぞお楽しみに!

記事初稿時、橘家文蔵師匠のお名前に誤りがございました。関係者各位にお詫び申し上げます。

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