演舞場発 文化を遊ぶ 第八回

演舞場発 文化を遊ぶ 第八回
なでしこの踊り 晩夏2016
  2016年9月2日

2016年9月2日、 「演舞場発 文化を遊ぶ」として好評の、新橋芸者衆 若手連中による「なでしこの踊り」がこの夏も開催されました。(全期間9月2日〜7日)

のりえさんと寿々女さん

新ばし芸者は銀座の芸者。「芸の新ばし」とも呼ばれ、日本各地の花柳界から一目置かれる存在でもあります。
新ばしの芸者衆が芸を磨き披露するために建てられた新橋演舞場ですが、その新橋演舞場が建てられた際のこけら落とし興行から現代まで続いているのが、花柳界の門戸を5月の4日間のみ開くハレの催し『東をどり』。 この芸者の晴舞台でもある『東をどり』は今年で92回目を迎えました。

『なでしこの踊り』では大舞台『東をどり』を引っ張っていける次代のスターを皆さんに見つけていただきたいという思いで、若手芸者衆を起用しています。 お話をしたり自由にお写真を撮っていただいたり、と芸者衆とのふれあいができるのもこの『なでしこの踊り』ならでは。 あまり日常では体験することのできないお座敷の雰囲気を感じ、楽しんでいただけるように企画しています。

一組の芸者衆
二組の芸者衆

芸者衆が並ぶと舞台はパッと華やかに。
「夏の思い出となるように、皆して精一杯頑張ります。あたたかく見守ってください。」と少しだけ緊張した面持ちで芸者衆が一人一人、ご挨拶くださいました。

本日のお料理

食材が一番豊富なこの季節。日本の晩夏は美味しき食が集まります。
今回は季節の魚、鰻を卯の花と和えたお料理をはじめ、目からも甘みを感じられる南瓜カステラや人参、青々としたブロッコリーの多喜合わせ、丁寧に細工された木の葉冬瓜にカニ入り銀あんをかけ、といつも以上に目と舌で楽しめるお料理の数々です。
また、さっぱりとした蓮根の梅肉和えなど金田中の流れをくむ新橋演舞場の本格的な日本料理が楽しめます。


テーブルに料理が並んだところで、木の香うれしき升に芸者衆がお酒をお酌するサービスのお時間に。お客様は、贔屓にしている芸者の名入りの升を持ち帰ることができます。
八海山や久保田の千寿そして甘酒などが振る舞われ、お座敷の雰囲気を感じられる貴重な体験とあって、皆さんにとても喜んでいただけました。

君二郎さん
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なでしこの踊りの前に、踊り子の新ばし 小喜美さん、加津代さんを招いた解説のお時間です。
(写真 左:小喜美さん 右:加津代さん)

小喜美姉さん
加津代姉さん

加津代さんが芸者になった頃は380人もの入門生がいらっしゃったそう。「でも今も芸者は若い子に人気。決して絶滅危惧種じゃないんですよ。」と笑いを誘い場が和みます。

なでしこの踊りは、毎回テーマを決め、そのテーマに合わせた踊りを先生に作っていただき披露しています。
今回のテーマは『お祭り』。

日本三大祭りから江戸の三大祭りとお祭りの話は尽きませんが、今日の踊りや芸者さんの装いなどについてわかりやすく話してくださいました。 芸者衆の華やかな踊りのお写真と共に、お楽しみください。

なでしこの踊り

---小唄 夏景色

これは日枝神社・山王さんのお祭りを歌った唄。その昔、市丸さんが歌ってとても人気となった唄です。
「上覧祭り」とも言いまして、徳川家光公が山王祭をこよなく愛しておられ、お神輿を江戸城城中まで入れてしまったことから、将軍様がご覧になった「上覧祭り」と呼ばれるようになりました。

---清元 お祭り(通称:申酉)

江戸祭りの代表曲。江戸城から申酉(さるとり)の方向に日枝神社がありまして、今回は山王祭を取り上げておりますのでこの唄を入れさせていただきました。
江戸は火事が多く、そんなときに命がけで皆を守る火消し(鳶)の若頭は当時とても人気者でスターでした。
この曲は、そんな若頭と芸者の恋ものがたりを歌った唄。恋ものがたりと言っても、時々喧嘩をしたり粋でいなせなカラッとした唄になっています。

---俗曲 ドンドン節

どーんどん。と手拍子をしながら楽しめる、軽快で愉快な唄です。二番まで踊ります。

---端唄 おかめさん -キリギリスの二番-

久保田万太郎さんが作詞、三味線の天才名手・山田抄太郎さんが作曲です。 コミカルに賑やかにいたしまして、女役の芸者二人でひょうきんに踊ります。

---常磐津 勢獅子

なでしこの踊りの中でも一番迫力のある踊りです。一番前のお席の方は身を引くくらいダイナミックに芸者衆が金棒を振り回します。
ただし、お客様には絶対に当てませんから身を乗り出して見ていただいて大丈夫ですからね。と笑いを誘いました。

---清元 三社祭

歌舞伎舞踊の代表的な演目で、今は亡き勘三郎さんと三津五郎さんがお二人、漁師の格好をして小気味好く踊っていらっしゃった踊りです。
今日は芸者衆が全員で賑やかに踊りますのでごゆっくりご覧になってください。

なでしこ 夏の装い

通常、浴衣は綿浴衣ですが、明治の頃に新橋の芸者が絹の「ちりめん」で浴衣を作り着るようになりました。
いわゆる長襦袢がないため、すぐ汗になるし昔は贅沢な着物でした。

男形の芸者さんの頭は前割のセンターパート。裾はひきません。
帯は後見結びといった平たい形で現代でもよく使われている結び方ですが、これは新橋流になります。

女形の芸者さんの頭はつぶし高島田。涼しげにヒスイ玉のかんざしや白い象牙やガラスの櫛をさしています。

裾をひいて、帯は角出し。
肌襦袢に赤の襟を付け、わざわざ片方の赤襟だけを見せることで、芸者の粋な色気のある姿を表現するのが新橋流。
この襟の赤も新橋のこだわりで、京都のゑり萬さんの少し黒っぽい色気のある赤を使用しています。 日本色の中にも『新橋色』という色がありますが、これも大正時代に新橋の芸者衆が好んで着ていた藍色です。
帯から出ている「ぶら」は財布につけたストラップのようなもの。落ちたときに音がしますのでなくす心配もありませんし、 好きな役者や恋人の紋をさげ、密やかなおしゃれを楽しむのだそうです。

お座敷遊び お伊勢参り

遊ばせ上手の芸者にならい、お客様全員で「お伊勢参り」を唄います。
お客様が歌う唄に合わせて芸者が踊る、遊びに始まる芸能文化をご体感いただけます。 お客様の参加が少ないと芸者さんに踊っていただけない、という冗談にほろ酔いの会場にも熱が入りました。

みんなで手拍子しながら歌います

また演舞場サービスの内藤さんより、お伊勢参りの歌のCD(カラオケ入り歌詞カード付き)を5名さまにプレゼント!ということでじゃんけん大会も大変盛り上がりました。

のりえさんと寿々女さん

お座敷遊びのあとは、芸者衆が会場を回るふれあいのお時間です。 皆さん思い思いに芸者衆へ感想や質問、お礼などを伝え、貴重なコミュニケーションを楽しんでいらっしゃいました。

左手前:男役 喜美弥さん、右奥:三味線:ゆいさん
女役:
女役 ぼたんさん



最後に新ばし 踊り子のお姐さんや芸者衆よりご挨拶。
「20年ぶりの式年遷宮、サミットもあり、ここでお伊勢参りを歌えばお伊勢さんに行ったようです。
皆様に幸せがくるようにと思って歌わせていただきました。思い出したらまた歌ってくださいませ。
本日はありがとうございました。」
と気持ちのこもった言葉と手締めで、本日のなでしこの踊りはめでたく終了いたしました。

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